Existence *
次の日、仕事終わり美咲に19時には行けそうって伝えて、俺は一度帰宅し出かける準備をする。

一旦、出ようとしていた足をふと止めて、思い出したかのように俺はもう一度リビングへと戻った。

ここへは来るかどうかは分からないが、テーブルに広げてある資料とノートを搔き集め、それを使っていない部屋のクローゼットに入れる。

そして俺は再びマンションを出た。


車を走らせて美咲の家に着いた頃には19時を回る。

玄関前で待っていた美咲の前に車を停めると、美咲は笑みを浮かべながら助手席へと乗り込んだ。


「ごめん、待たせて」


暑そうに待っていた美咲に申し訳なさそうに口を開く。

長いストレートの髪を耳に掛け、シートベルトをしながら俺に首を振った。


「ううん。さっき出て来たばっかだよ。お風呂入ってたの?」


時間が押してしまった所為か、美咲は微笑んで聞いて来る。


「あぁ。じゃねーとそのまま来れねぇよ」

「そっか…」

「今日、何してた?」

「あー…とくに」

「とくに?」


美咲が言った言葉に、なにそれ。と思いつつフッと鼻で笑う。


「うん。ベッドに1日中いた」

「マジで?」

「うん、マジ」


その言葉に思わず笑ってしまった俺の声と美咲の笑った声が重なり合う。

ベッドに1日中って、どう言う事?


「なんか、美咲っぽくねーな」

「ってか、私のイメージってどんなのよ」

「んー…休みなく働いてるって感じかな」


ほんと、それしか記憶がないくらい。

いつも、バイト、バイトって。

俺に会う日までも削ってバイトしてたしな。

俺よりバイトが優先だった。


「って言うか、それ翔じゃん」

「うん?俺?」

「うん。体調大丈夫?暑いから」

「うーん…なんとか」

「無理しない程度に頑張ってね」


なんか分かんねぇけど調子が狂った。

まぁ、俺の事を気にしてたのは昔から。

だけど…


「…あれ?美咲ってそんな優しかったっけ?」

「はぁ?」


ここぞとばかりに美咲の声が響く。

だから俺は声に出す笑い声を抑えてクスクス笑みを漏らした。
< 19 / 119 >

この作品をシェア

pagetop