Existence *
「うわぁー…、楓じゃん!…って、今は違うのか、」

「……」


どれくらい時間が経ったのか分からない頃だった。

クスリと笑った女の声に反応し、タバコを咥えたまま俺は視線を横に向けた。


「久しぶりだね。覚えてる?私の事」


微笑んだ女の顔が覗き込むようにして俺の前に飛び込む。

その顔を見て思い出す様に俺は記憶を辿った。


「あー…、」


タバコを咥えたまま小さく呟き、俺は女を見つめた。

…ミカ。

ほんとに久々すぎて、あれからどのくらいが経つのだろうか。


「あーって、何その反応。もっと言う事ないの?」

「ねぇな」


咥えていたタバコを口から離し、先端についている長くなった灰を灰皿に落とした。


「ってか、こんな所でどうしたの?」


クスリと笑ったミカが俺の横に座り、首を傾げる。


「お前こそ何やってんだよ」

「友達と会うのに時間潰ししてる」

「へぇー…」

「で、時間つぶしにここに来たら楓に出会っちゃった」

「そう…」

「うわっ、なんか冷たいね。まぁ相変わらず?って感じかな。夜の仕事終わったらそんな感じだったもんね」

「……」

「それにしても楓は変わんないね。もう6年くらい経つのに男前実行中ってやつ?」


頬杖をついて、俺を見つめるミカはクスリと笑った。

あの当時のミカはとにかく派手だった。

まぁ夜の仕事をしてるってのもあったけど、今では当時と比べて物凄く落ち着いていた。


「あー…あれから6年も経つんか。ちゃんと子育てしてんの?」

「あ、覚えてたんだ」

「まぁ、あん時のお前めんどくさかったしな、待ち伏せが」

「そうだよねぇ。あの時いつも楓の事待ち伏せしてたからね」

「ほんまにな」


苦笑いになるミカは思い出す様に笑った。


「もうすぐで6歳になるの」

「子供ほったらかして夜遊びかよ」

「ちゃんと毎日育ててますぅー…、今日はママが見てくれてる」

「まぁ、息抜きも必要だしな。必死になるとしんどくなる」

「ちょっとなに?どうしたの?楓らしくないね」


グラスに入った酒を飲み、指に挟んでいたタバコを咥え、俺は残り少ない酒を見つめた。

< 229 / 247 >

この作品をシェア

pagetop