Existence *
そのグラスにまた酒を注ぎ、口に含む。


「お前も飲む?」


瓶を手に持ってミカを見つめると、ミカは酒を見つめる。


「何飲んでるの?」

「ウイスキー」

「またそんな強いお酒飲んで。ほんっと楓は酔わないね」

「酔いたくても酔えねぇんだよ」

「何その意味深。ねぇ、なんでそんな落ち込んでるの?」

「そんな風に見える?」

「見えるよ」

「もう若くねぇからなぁ…」

「楓はまだまだ若いよ。正直びっくりした。絶頂期と全然変わってないからすぐに分かったよ。相変わらずの男前だね」

「なにそれ」


思わず苦笑いになり、タバコの煙を吐き出す。


「ホスト辞めて気が楽になったんじゃないの?」

「辞めたってよく知ってんな」

「当たり前じゃん。あんな絶頂期で辞めたら噂なんて広がるよ」

「そう…」

「戻ってくるとかなんとか話くけどさ、落ち込んでるのはそれじゃなさそうだね」

「……」

「もしかして彼女?」

「……」


ミカは面白そうにクスリと笑って、俺を更に見つめた。


「そっか。図星か、」

「女居るって何も言ってねぇけど」

「皆言ってるもん。一緒に歩いてる所見たことあるって言ってる人もいたもん」

「昔からのツレだろ」

「もぉ。こんなに噂になってんのに隠せないでしょ?別に安心してよ、私は楓の事なにも想わないし」

「……」

「確かに昔は好きだったけど、それはただの憧れ。芸能人みたいな?今は何も想わない」

「そのほうが助かるわ」

「何よそれ。それに私彼氏いるし」

「あー…そうなん?」

「聞いてショックだった?」

「はい?何に?どうでもいいわ」

「ちょっともぉ、相変わらず冷たいんだから」


頬を膨らませるミカにハハッと笑う。
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