Existence *
「今の男はどうなん?」

「いい人だよ。結婚しよって言われてる」

「あぁ、そう。良かったな」


ミカをチラッと見て俺は頬を緩めた。

だけどミカは不満そうに少しだけ顔を顰める。


「でも、そこに踏み込めない自分が居る」

「なんで?」

「子供いるから」

「そこって必要?考えなきゃいけねぇの?」

「必要でしょ?私だけが幸せになるとか、子供と彼の間柄とか、」

「……」

「確かに今はお互い仲良くしてるけど、一緒に住むとそうじゃなくなるかもって、色々考えちゃう」

「考えてもキリがねぇ事は沢山ある。先の事なんて何も分かんねぇけど、なるようにしかならないってそう思ってる」

「……」

「こんだけ言っても女って聞かねぇのな。不安にさせないようにって思ってんのに女ってすぐ不安を前提に考える」

「……」

「まぁそれだけ信用ねぇって思われてるのかも知んねぇけど、それも仕方ねぇよな」

「えっ、ちょっと待って!楓さ、誰の事話してんの?」


ゆっくり煙を吐く俺にミカの少し大きな声が反響する。

タバコを灰皿に打ち付けながら視線を向けると、ミカは不思議そうに目を少し見開いて俺を見ていた。


あ、あぁ…

そこでつい自分の事を話してた事に気付く。

なんでこんな事言ってんだろう、俺。

ちょっとだけ酔ってんだろうか…


「いや、なんでも、」


そう言って、頬杖をつきタバコを咥えた。

だけどミカからクスクス笑った笑い声が聞こえ、俺は視線をミカに向ける。


その笑い声が未だに続き、頼んでいたカクテルにミカは口をつけた。
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