Existence *
「そうね。納得出来るわけないじゃない。でも私の気持ちを勝手に決めないでくれる?」

「……」

「私の好きはそんな簡単なものじゃないわよ。ほんっと、私も馬鹿にされてるわよね」

「あのさぁ、俺もうあの業界に戻るつもりもねぇし、リアの気持ちに答えることも出来ない」

「じゃあさぁ、」


そこまで言ってリアはクスリと笑った。

そして1歩、2歩と足を進ませ、俺に近づくとリアは俺の肩に手を置き顔を近づける。

甘いリアの香水が鼻を掠め――、


「じゃあさ、抱いてよ。抱いてくれたら楓の事諦めるわ」


そう耳元で口を開いたリアはクスリと笑った。


今まで何人の女にその言葉を言われただろうか。

抱いたら忘れるって。

ほんと、下らねぇな。

そんな下らねぇ賭けに俺が乗るわけがない。

だから思わず俺も嘲笑的に笑みを零した。


「なにそれ。俺、言わなかったっけ?好きな女居るって、付き合ってるって」

「だから言ってるでしょ?抱いてくれたら楓の事忘れるって。ホスト辞めたら抱けるって言ってたでしょ?」


リアが頬を緩めた。

確かに、あの頃は言っていた。

でも今は――…


「悪いけど、好きな奴しか抱かないって決めてんだわ。つかさ、もうアイツに会わねぇでくれる?」

「……」

「余計なことも吹き込むなよ」


お前のせいで美咲から距離置かれた。なんてのは言えねぇけど、その所為で物凄く腹がたって仕方がない。

でもリアには感謝してる。

だけど、それとこれとは別だった。

未だに涙を流していた美咲の顔が頭から離れない。


「言われる方が悪いんじゃない」

「はい?」

「私は正論を言っただけ」

「正論じゃねぇだろ。…頼むからアイツに会わねぇでくれる?」


もうめんどくさくなってしまった。

深いため息を吐き捨てて、リアを見つめると不服そうにリアは俺を見ていた。

その顔を見て、これ以上リアに何言っても無理だと思い、俺は何も言わずにその場で背を向けて足を進めた。


リアがどこからの情報で美咲の事を知ったのだとか。

リアがどうして美咲の居場所を知ったのかとか分からないが、余計な事すんなやってのが正直の気持ちだった。

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