Existence *
「なに?」


流星の視線が俺に向く。

その視線を遮るように俺は視線を避けた。


「別に」


小さく呟きタバコを咥えて俯く。


「レンがさ、お前が不機嫌すぎるっつってた」

「そう…」

「それってリアの事?」

「……」

「それしかねぇよな。アイツも怒ってたし」

「……」

「まぁ、別にお前らの事は俺にはどうでもいいけどよ、巻き込まねぇでくれる?」

「はい?」


流星の言葉に顔を顰めて小さく呟く。

巻き込むってなにが?


「巻き込むなっつってんの」

「いや、違うだろ。巻き込まれてんの俺だからな」

「あぁ…そうなんかな?」

「そうだろ。辞めた今でもわけわかんねぇ噂で振り回されて、余計な事ばっか吹き込まれて、関係ねぇ奴に言われたくねぇんだけど」

「それで美咲ちゃん困ってんの?」

「…っ、」


まさか美咲の名前が出て来るとは思わなかった。

一瞬、流星をチラリと見ると、目が合った瞬間に流星はクスリと笑う。


「あぁ、そっか。なるほど。だからお前怒ってんだ」

「だから怒ってねぇって」

「怒ってんだろ。怒ってる空気ダダ漏れ」

「……」

「まぁ、もうそれは信じてもらうしかねぇよな」


ため息を吐き捨てた流星はソファーに深く背を付け、手に持っているペットボトルの水を口に含んだ。

信じてもらうしかねぇよな…

って、そんな簡単な事ではない。


信じてほしくても、美咲は俺の事を信じてはいないだろう。

俺の気持ちも何もかも…


流星との話を切り上げて外に出る。

相変らずこの時間になっても輝きを増し、人通りもある。


店から駐車場に足を進めていている時、一度通り過ぎた俺の視線が再び戻る。


閉まっているビルの前にある古びたベンチ。

そのベンチに気力をなくすかのように座っている女子高生。

一度通り過ぎたものの、気にって視線を戻したのは見覚えがある顔だったから。


多分、美咲の――…

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