Existence *
「分かった?」


沈んだ表情で海を見つめる美咲の頭をクシャりと撫ぜ、俺は笑みを零す。


「…うん」

「正直…なんつーのかな、」

「うん?」

「ここでさ、美咲に行って来いって言ってさ…」

「うん」

「5年って、あっという間とか言ってたけど、正直長かった。こんなに長いとは思わなかった」


美咲にとっては充実で楽しい5年だったと思う。

色んな話を楽しそうにする美咲の顔を見て、俺も嬉しくなった。

だけど俺にとっての5年は本当に苦しくて、切ない5年だった。


会いたくて、

会いたくて、

待っていた5年。

過ぎ去った5年でも長いと、そう思った。

俺も俺で、こんなにも考えるとは思わなかった。

長いと思っていても、平気で待てるって、そう思ってたのに現実になるとそうでもなかった。


「…ありがとう。待っててくれて」


そう言った美咲の笑みに俺も頬を緩ませた。


「帰ろっか」

「…うん」


どれくらいこの場所に居たのかも分からなかった。

ポケットから取り出したスマホの画面に明かりを灯す。


とっくに24時を過ぎていて手に持っているスマホを仕舞うと同時に俺は立ち上がる。

そして美咲の手を握り、引くと同時に美咲が立ち上がる。


「どうする?家帰る?」


駐車場に着き、車に乗ろうとする瞬間、目の前の助手席側に立っている美咲に視線を送る。


「うーん…翔の家、行く。と言うか行ってみたい」

「来てもとくになんもねぇぞ」

「だって見たいもん」


だって見たいもんって、何を見んだよ。

マジでなんもねぇし。

そう思い苦笑いしながら車に乗り込み発進させる。


暫くして会話がない所為か、美咲を見ると、美咲は窓に頭を預けて眠っていた。

その姿に頬を緩ませ、俺は車を走らせた。
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