Existence *
「え、いらねぇの?」

「だって、こんなのもう着れないや。時代が違う」

「時代が違うって、なんだそれ」


ベッドに腰を下ろした俺は美咲をみながらクスクス笑みを漏らした。


「若い服って事だよ」

「まぁな。まだ高校生だったしな」

「うん」

「懐かしいなー…」


思い出す様に俺はベッドに寝転び目を閉じる。

ほんと、思い出すと懐かしい。


「それよかスーツどうしたの?」


不思議そうな美咲の声に閉じていた目の再び開ける。

顔を背けると、美咲はクローゼットの中をジッと見つめてた。

そっか。

5年前はクローゼットが埋まるくらいビッシリとスーツがあった。

それが今では数着になってるからそう思うのか。


つか、むしろそれに気づくのか、と思った。


「あー…捨てた」

「えっ、捨てたの?」

「あぁ」

「なんで?」

「何でってもう着ねぇし、必要ねぇし」

「でも勿体ないじゃん」

「勿体なくても置いてても着なかったら邪魔だろ」

「そーだけど…」

「あー、でも何枚かは後輩にあげて、あと諒也にも」

「へぇー…そうなんだ」

「…美咲、風呂入れば?」

「あ、う、うん」

「着替えあるから」

「ありがと」


美咲が風呂に入った後、俺は再びベッドに横になる。

眠い。

この時間にまず起きてることがない所為か、余計に睡魔が襲ってくる。


ホストを辞めてから規則正しい生活になったせいか、1時にはとっくに寝ていた。

ホスト時代と比べ物にならないくらい、生活がガラリと変わった。
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