Existence *
仕事中、不意に鳴り出したスマホに手を伸ばす。

画面を見つめると流星の文字。

あいつとはいつから会っていないのだろうか。

ホストを辞めてから、ほとんど会う機会もなく、今では流星よりも蓮斗とつるむ方が多い。


「…はい」

「お前、元気かよ」

「あぁ。珍しいな、どした?」

「近々会えねぇか?」

「なんで?」

「話したいことがある」

「電話じゃダメなのかよ」

「電話で済むような話じゃない」

「ふーん…」

「今日でもいい」

「いやー…また電話するわ」

「はいよ」


電話を切って一息吐く。

流星の話とやらに心地いい気分にはなれなかった。

久しぶりの電話。

直感だがめんどくさそうって、何故かそう思ってしまった。


「あ、翔。今度の日曜なにしてんの?」


不意に聞こえた声。

スマホの画面から視線を背けると、蓮斗が俺を見て笑みを浮かべた。


「愛優ならみねぇぞ」


素っ気なく言った俺に蓮斗は更に笑みを浮かべる。


「まだ何も言ってねぇじゃねぇかよ」

「お前がそう聞いてきたらそれしかねぇだろうが」

「あー、そか。美咲ちゃん帰ってきたもんな。3人で公園でも行けよ」

「なんで、そーなんだよ。梨々花は?」

「仕事。予約入ってから見れねぇの。俺も別件。保育園は休み」

「あぁ、そうかよ」

「お前しか居ない」

「いやいや、俺、子守バイトしてねぇから。諒也も頼んでくっしよ」

「お前が一番懐いてくれる」

「つかよ、親に頼め」

「この辺に住んでねぇの知っててそれ言うかね。タケルにしよっかな」

「それがいいわ」

「でもアイツ飯とか言うからなぁ。あ、葵ちゃんに頼んで香恋と遊ばせとくわ」

「そーしとけ」

「最近あれだわ。諒也より、葵ちゃんと居る方が多いわ、俺」

「なんだよ、それ」


苦笑いする蓮斗に俺も苦笑いになる。


「そんで香恋に会ったら、翔くんは?って、あいつ毎回聞いてくんの。あいつの脳内、お前しかいねぇわ。そろそろ同伴とアフターでもしとかないと香恋おこんぞ」

「香恋と遊ぶ日は1日空けとかないと帰らしてくんねぇからな」

「ほんとお前が居て助かるわ」

「いやいや、おかしいだろ。それ。…なぁ、それよりさ、流星と会ってる?」


視線を蓮斗に向けると不思議そうに首を傾げ、ポケットから取り出したタバコを咥え、「なんで?」そう言いながら火を点けた。
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