Existence *
「あー…そうだ。金おいとくから」

「お金?」

「ほら食費とか、あと他…」

「いいよ、それくらい。私働くんだよ?」

「馬鹿。それとは別だろ」


昔と変わらず甘えねぇよな、こいつは。

そう思い、少し頬を緩ませ俺は美咲に額を指手軽く押す。

グランと小さく揺れた頭を美咲は擦り、申し訳なさそうに俺を見つめた。


「でもなんか申し訳ないな」

「俺に申し訳ないって思うな。こっちの方が飯作ってもらってんのに申し訳ねぇよ」

「別にそれくらいは…」

「だろ?俺も同じ気持ちだから。だからいいって」

「ありがと」

「あぁ」


未だ申し訳なさそうな美咲の表情とは打って変わって俺は笑みを作る。

そのまま立ち上がって冷蔵庫の中から水を取り出し、薬の袋を掴む。


「ねぇ、…翔?」


隣に来た美咲は不安そうな声を出し、俺の手の平にある錠剤に視線を落とす。


「あぁ、これか」


無意識だった。

美咲の事を気にせずいつも通りにしていた行動。

美咲の前では飲まないようと昔からずっとそうやってきたことが、忘れていたかのように無意識に薬を取り出していた。

その錠剤をかき消すようにと俺は喉に流し込む。


「やっぱ良くないの?」

「大丈夫っつただろ。薬の量はほぼ減ったし、もうあんま飲んでねぇから数か月後にはなくなるってさ」

「…ほんと?」

「ほんと。嘘は言わねぇよ」

「そう。ならいいけど」

「美咲、気にしすぎー」


そう言って俺は微笑んだ。

薬の量は減ったのは間違いないし、あと数か月後になくなるのも本当の事。

でも、ただ浴びる様に飲むと薬は辞めることが出来ない。


もう、そんな浴びるほど飲むことなんかこの先ないから、そろそろ終わり。

そう思うと、美咲はあの当時のままの美咲で何も変わっていなかった。


今でも俺の事を心配する美咲が変わっていなくて。

でも逆に心配させてる事に俺は申し訳なくなった。


ほんと。

昔も今も変わんねぇや…
< 38 / 119 >

この作品をシェア

pagetop