Existence *
「あの人、納得させるって相当な事だぜ?知ってんだろ、お前も」


知ってる。

店の事には相当シビアな人だった。

だからあの人が居たからこそ、あそこの店がどこよりも格があり、他の店より地位が高い店になっていた。

変なこだわりがあるからこそ、高級の店にまで至った。


だから、俺はあの人が凄いって思っていた。

あんな風にあそこまでの店を立ち上げて来た社長に俺は尊敬してた。


「つかよ、ルイはどした?あいつがトップなんじゃねぇの?」

「あー…」


不意に落ちないようなその呟き。

そして流星は鼻でフッと笑った。


「あいつさ、客の女腹ませてさ、社長が切ったんだわ。店の株が落ちるって」

「へぇー…」

「しかも一人じゃねぇらしいし。だからよ、結構揉めてよ」

「へぇー…」

「あれ?ビックリしねぇの?一人の女じゃねぇみてぇだぞ」

「ビックリしねぇわ。そりゃあんだけヤってりゃ妊娠すんだろうよ」


全然びっくりも驚きもしなかった。

いつかはそうなんだろうなって思ってた事。

それが今になっただけの話。


「それお前が言うかねぇ。昔を忘れたのかよ。あれで腹ませてないお前の方が不思議だわ」


意地悪く笑った流星の声を耳に俺は小さくため息を吐き捨てた。


「俺、そこまで馬鹿じゃねぇよ」

「あ、そう」

「アイツと一緒にすんな。つか、いつの話してんだよ。10年も昔の話だろうが」

「あー…もうそんな経つんか」

「で、俺はもう未練ねぇから戻る気ない。美咲、帰ってきたし」

「あ、美咲ちゃん帰ってきたん?」

「あぁ」

「長かったな、まじで。そか、やっとこさだなお前」

「はい?」

「我慢してたセックスもし放題だな」

「そうし放題。だから夜は戻れねぇよ」

「何言ってんの、お前」

「お前が言ってくっからだろうが」

「そういう風にアキがずーっと言ってからなぁ。ウザいよ、ほんと」


笑いながらタバコに火を点けた流星は俺を見て口角を上げた。
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