Existence *
振り返った先に居るのはリア。

俺をジッと見つめると、流星は吸っていたタバコを灰皿に押し潰し火を消した。


「俺、帰るわ」

「おい、待てよ」


立ち上がる流星の腕を俺は咄嗟に掴む。


「リア、お前と話したそうだから。それに俺、店抜け出して来てっから」

「いやいや、この状況でリアと2人はマズいだろ。俺、言わなかったっけ?美咲が帰ってきたって」

「聞いた。でもリアは一人じゃない。男と来てる。ここらじゃ有名な御曹司財閥の息子。リアの婚約者」

「…婚約者?」

「って事になってる」


クスリと笑った流星。

こいつは一体何を知ってんだろうか。

だからと言って俺には何も関係ない事。

チラッと振り返るとリアは一緒に来た男と何か話をしていて、奥の方に指さしていた。

さすがリアと居る男だと言ってもいいくらい、長身の細身のスーツを着こなす紳士な男だった。

御曹司財閥。そう言われて、なんとなく見た事のある顔だった。


「ホスト外れてっから俺、話す事ねぇんだけど」

「お前には一切言ってなかったけど、リアが店に来る。お前に会わせろって。それを俺はずっと断ってきた。俺の身にもなれよ」


流星はほんとにめんどくさそうにため息を吐き出す。


「は?もしかしてお前がアイツ呼んだって事?」

「俺がそんな悪質な事するわけねぇだろ。むしろ男と来てんのによ」

「……」

「一回話さねぇとアイツは全くお前が辞めた事を許してない。手ごわいのは社長よりリアのほうかもな」


フッと鼻で笑った流星はこの場を離れる。

そして流星と入れ替わるようにリアが隣に座った。


「なに飲みますか?」


座った瞬間、旭がリアに声をかけるとリアが後ろを振り返った。


「私はいい。あっちに聞いてきてくれる?」

「わかりました」

「久しぶり、楓」

「そうだな」

「辞めたら私とは会わないって事かしら?」


不満げにリアは口を開き俺を見て顔を顰めた。
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