Existence *
「それは、私が決める事」

「そうだなぁ…。ってか俺さぁ、」


そこまで言って口を閉じる。

俺、好きな奴いんだわ。

もしくは、付き合ってる奴がいる。


その言葉を吐き出そうとしたけれど、リアには言えなかった。

リアに言うと面倒なことになると思った。


言ったからって引き下がるリアでもない。


「なに?」


言葉を止めたせいでリアが覗き込むように俺の顔を見た。


「いや、」


そう言って、タバコを咥えたまま小さく呟き、更に言葉をつづけた。


「お前、男待たせてんだから行けば?俺も帰るし」

「また会ってくれるの?」

「もう俺、ホストじゃねぇしな」

「だから、私は認めてないから」


不満げに言葉を吐き出すリアに最後のタバコの煙をため息交じりに吐き出し、俺は立ち上がってタバコを灰皿に押し潰した。


「辞めたのは俺自身が決めた事。リアには感謝してるし楽しかった。ほら、男待たせんなって」


“じゃぁな“

付け加える様にそう言って、俺はその場を離れる。


冴えないまま帰宅し、テーブルに経営に関する資料を置き、目を通すも、全然頭に入らず、俺はソファーに寝転び目を閉じた。

社長といい、リアと言い、そして他の女の言葉。

ほんとめんどくせぇな、って思うのが正直な気持ちで。


今更、夜の業界の事を話されても何も後悔も未練もない。

夜から足を払ったら、もう関りをもった女とは会いたいとも思わない。


どれくらい目を閉じていたのかも分からなかった。

不意に鳴り出した着信音。

テーブルに置いていたスマホを掴み、俺は画面を見る。


…美咲。

こんな時間にどした?と思いながらスマホを耳にあてる。


「はい」

「ごめん、こんな時間に。もしかして寝てた?」

「いや。風呂入ろっかなーって思ってた」

「あ、そか」

「どした?」

「あのさ、そっちに薄茶色の封筒置いてない?」

「封筒?」

「そう。その中に学校の書類とか入ってんの」

「リビングにはねぇけど」

「あ、もしかしたら別の部屋かも」

「ちょっと待って」


起き上がって、俺は寝室へと入る。

そこにもなくて、もう一つの部屋の電気を点けた。

点けた瞬間、そこにあるテーブルの上にB4サイズの茶封筒が目に入る。
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