Existence *
「って言うか…こっちのほうが驚いてるんだけど」


戸惑ったように言葉を吐き出し、俺の後を着いて来る美咲に思わず頬を緩めた。


「…元気だった?」

「あ、うん。…翔は?」

「疲れた」

「え?」

「美咲待つのに疲れたっつってんの。連絡ぐらいしろよ」

「してたじゃん」

「あれでしてたって言えんのかよ。一年に数回。普通ありえねぇだろ」

「でも…翔だって同じじゃん」

「美咲がしてこねーからだろ」

「だって…」


小さく呟いた美咲は困ったように眉を下げる。

確かに俺もしてなかった。

思い出すと会いたくなってしまう事を避け、仕事に没頭していた。


「って言うか…」


小さく呟き、俺は進めていた足を止めて、美咲を見つめる。

ほんとに逢いたかった。


「おかえり」


そう言った俺に美咲の表情は柔らかくなる。


「ただいま」

「正直言って5年のブランクは大きすぎた」


ほんとに、ほんとに大きすぎて、俺自身、ここまで辛くなるとは思わなかった。

情けないけど、長かった。


「もう…忘れてるかと思ったよ」

「そんな訳ねぇじゃん。忘れてたらここにも来てない。…美咲が居なかったら俺が居る意味ねぇじゃん」

「……」

「会いたかった」

「……」


ずっと、ずっとそう思って過ごしてきた5年。

美咲はそんな事、思ってなかったかもしれないけど、俺はずっと会いたかった。


見つめる俺に美咲の瞳が揺れ動く。

その目に赤みを帯びて、薄っすら潤んでいるのが分かった。


そしてそれを誤魔化す様に美咲は笑みに変えた。


「来てくれて…ありがとう」

「俺に連絡なしは寂しかったけど」

「ごめ…。だって突然行ってさ、ほんとに驚かせようとしたの」

「驚かせるっつったって、もうあそこには住んでねぇよ」

「…え?」


美咲は相当驚いたのか目を見開き、俺をジッと見つめる。

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