Existence *
食べ終えた後、暫くしてからマンションを出る。

お墓に向かう途中で花屋に寄り、そして再び車を走らせる。


「遠いの?」

「ううん。あと5分くらい」

「そっか」

「つーかさ、2日後って新学期?」


もう8月も終わりか。なんて思い、ふと気になって美咲に声を掛ける。


「…そうだね」

「緊張してる?」

「緊張って言うか、どうやって接したらいいか分かんない」


何それ。なんて思いながら俺は思わず頬を緩めた。

むしろ美咲が教える立場って、とか思うと本当に実感がわかねぇわ。


「ま、普通でいいんじゃね?でも、なんかすげぇな。美咲がセンコウって」

「センコウって言わないでよ、その響いや」


膨れっ面になる美咲の表情に俺は思わず声に出して笑う。


「あ、もうすぐ」


次第に見えてきた坂道。

ここを上るとその先は目的地のお墓。


ほんと、久しぶり。

駐車場に車を停め、途中にある水道で水を汲み、美咲と一緒にお墓に向かう。

俺の後ろをゆっくりと着いて来る美咲の小石を踏む足音。

振り返ると、美咲は花をギュッと抱えて、辺りに視線を見渡していた。


「ここ」


足を止めて、お墓を見つめて一息吐く。


「誰か来てるみたいだね」


美咲が言うように新しい花が添えられている。

俺が墓に来ると、いつも通りの光景。

ほんと沙世さんは、どんだけ来てんの?って言いたい。


いや、俺が来てないだけか。


「あぁ。多分、お袋のツレ」


多分って言うか、沙世さんしかいないだろうけど。


「そうなんだ」

「今でも俺の事心配してくれてんの。…また会わせる」

「うん」


沙世さんにはいつかは美咲を会わせないとって思った。

だけど、そう思ってても根掘り葉掘り聞くだろうなって思う沙世さんと会わせるのも躊躇ってしまう。


あの人に会わせるのはある意味勇気がいる。

でも、こうやって俺の事もお袋の事も思ってくれる事に凄く感謝している。
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