Existence *
店に入った瞬間に二人の笑い声が響く。

このふとりが会ったらロクな事がないのは確かだが、俺が流星をここへと導いてしまった。


「あ、翔くん、おかえりなさい」


蔓延の笑みでもう一度迎えてくれた沙世さんに視線を移して沙世さんの隣に腰を下ろす。

目の前に座っている流星は俺を見てクスクス笑みを浮かべた。


「抜け出してこられたのかよ」

「なんとか」

「まぁお前がこの周辺を歩いてて見つからねぇほうが奇跡だよな」

「ほんとそうだよねー、素っ気ない態度とって交わしても翔くんの事が好きなのね」


沙世さんが面白そうに笑いながら俺を見る。


「そうなんすよ。未だ店にも来る奴が楓、楓って言ってから」

「流星君も大変だね」

「ほんま大変っすよ。美咲ちゃん可哀相だな」


つか美咲の名前出すな。と思いながら俺は顔を顰めた。

タバコを咥えて火を点ける流星はクスリと笑みを浮かべると、隣の沙世さんがハッとして手をパチンと叩いた。


「あ、そうそう。この前ね、翔くんと美咲ちゃんが居るの見たんだけど、物凄く美人だったの」

「あれ?沙世さん、まだ会ってねぇの?」

「だってこの子会わせてくれないんだもの」

「お前、紹介しとけよ」

「はい?なんで?」


思わず流星の言葉に俺は顔を顰めて呟く。


「めちゃくちゃ美人だったからビックリしちゃって」

「そうなんすよ。高校生の時からすげぇ美人っすよ。あー…美咲ちゃん帰ってきてから俺会ってねぇわ。また会わせて」

「は?なんでだよ、もう美咲の話はいいから」


どいつもこいつも美咲、美咲って。

だから会わせたくねぇっての。

むしろもう、美咲と一緒に歩くことすら躊躇ってしまうわ。
< 63 / 119 >

この作品をシェア

pagetop