Existence *
「お前さ、今俺の事、見かけによらずとか思っただろ」

「え、あっ…」


小さく呟き美咲は少しだけ目を泳がす。

それをかき消す様に美咲は頬に笑みを作った。


「つか、まじか」


タバコの煙と同時にため息を吐き出し、タバコを灰皿に押し潰す。


「さて、寝よっか。あ、そうだ。明日ママの方に帰るから」

「おい、話し逸らすなよ」


教材を閉じ立ち上がる美咲に声を掛けると、美咲は密かに笑って寝室に向かう。

その背中に向かって俺はため息を吐き出した。


ほんと、アイツは…

なんて思いながら美咲が寝た後、読みかけていたビジネスに関する本に目を通していた。

アパレル業界で有利な資格。

リテールマーケティング検定はもちろん、色んな検定がずらっと並ぶ中、語学力とも書かれてある。


「語学ねぇ…」


そらそうだな。

読んでいくうちに当たり前だけど、知らない事も沢山ある。

ホスト時代から今まで色んな業界の人と関りがあったものの、最近になって知ることもある。


その読んでいる本は仕事中の昼休みまで読むこともあって。


「翔さん、本ばーっか読んでてしんどくないんすか?」


タケルがペットボトルの水を口に含みながら俺の横に腰を下ろした。


「しんどくなるほど読んでねぇから」

「翔さんは一体、何を目指してんすか?会社でも興すんすか?」

「まぁ、いつかは…」

「夜の店でも立ち上げるんすか?」

「あそこにはもう未練ねぇよ」

「そうなんすね。じゃあアパレル関係っすか?」

「まぁ、そんなとこかなぁ…」

「翔さん見てるとわかりますよ。いつも高級品で身を固めた男なんすから」

「いつも高級品なわけねぇだろ。最近、金も使ってねぇわ」


ほんと、ホスト時代と比べると、全く金を使うところがなくなった。

まぁ昔から忙しくてお金を使うって事があまりなかったけど、その時よりもほとんど今は欲しいものに欲がなくなっている。

タケルが言うようにホスト時代は高価な物で身を固めていたが、今では全くになっている。
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