Existence *
「翔くん、翔くんっつーから、うっせぇよお前っつって口塞いだらめっちゃ嫌がられた」

「お前ら3歳児に何してんだよ」

「躾だな」

「何が躾だよ、」

「楓さんはいいよなー、年齢問わず女が寄ってくる有難さ」

「有難さ?」


動かす箸を止めて、アキを見つめる。

そしてグラスに入っている水を俺は口に含んだ。


「まだ来てますよー、楓さんに会わせてって」

「誰が?」

「誰って、楓さんを指名してた姫っす。あ、リアさんは来てないっす」


俺の視線を読み取って勘づいたのか、アキはリアの名前を出した。

まさしくそう言われて、俺はリアの名前が一瞬出てくるんじゃないかって思ってしまった。


「あ、そう…」


小さく呟きアキから視線を外すと、「あー、腹減ったぁ」と言いながらアキとタケルはこの場から姿を消すと、流星がクスクス笑って俺の隣に腰を下ろした。


「気になる?リアの事」

「気にしてねぇってのは嘘になるけど、これで終わりだとは思ってない」

「まぁ、アイツだしな。他の女は相変わらずに言ってくっけど」

「そう」

「連絡つかないっつってた。お前、電話どーなってんの?」

「必要以外は拒否設定してる。辞めてから関りまで持ちたくねぇし」

「なるほどな。その所為で俺は迷惑してる」

「悪いな」

「あれ?珍しく謝ってくれんの?」


クスリと笑う流星に一瞬だけ視線を送り、一息吐く。


「むしろスマホの番号すら変えようと思ってる」

「そう」


いつかはスマホの中を全てリセットしないといけないと思っていた。

大量に埋まった番号。

もう必要ないものを全て洗い流さないといけないと思っていた。


ホストの世界に戻って来いと言う声すら俺には必要なくて。

この声がいつまで続くのだろうと、正直思う。


美咲の為に辞めたわけではないけれど、今は美咲の為に戻ろうとは思わない。
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