Existence *
「…翔?」


不意に聞こえた声に顔を上げると驚いた表情で見つめる美咲と目が合う。


「あ、おかえり」


ポケットにスマホを入れ、美咲に向かって口角を上げた。


「どうしたの?」

「うーん…大丈夫かなって心配してたから」


昨日からずっとそんな事を思っていて、ずっと気にしてた。


「あ、…うん。昨日はごめんね」

「うん?」

「冷静じゃない自分だった」


申し訳なさそうに表情を崩す美咲に俺は頬を緩めた。


「ちょっとは落ち着いた?って、んなわけねぇか」

「……」

「お母さんの病院に行ってきた。今は辛うじて話せるくらい」

「そう…ありがと」

「乗れ――…」

「あ!!美咲センセ!?」


俺の声を遮って弾けた明るい声が辺りを響かせる。

必然的に向けた視線の方向から制服を着た女の子が手を振ってこっちに駆け寄ってきた。


「あ…」


近づいて俺を見た瞬間に小さく漏らす声。

かち合った瞳から女の子は軽く頭を下げた。

その戸惑った表情に頬を緩ませ、同じ様に俺も頭を下げる。


「今から帰るの?」

「はい」


美咲の言葉に女の子は頷いて笑みを浮かべる。


「あー…家まで送ろうか?って、私が運転するんじゃないけど」


そう言った美咲は苦笑いをしながら車に視線を向けて指をさすと、女の子は戸惑った様に視線を泳がせた。


「送るよ?乗ってけば?」


戸惑ってる女の子に頬を緩めると、更に女の子は戸惑い俺に視線を向けた。


「あ、いや…大丈夫です」

「いいの?ホントに?」

「はい。じゃ、美咲センセまたね!さよなら」


笑顔で弾けた声に手を振って帰って行く女の子を見て、つい昔の美咲とリンクさせる。

まぁ、でもあんな元気よくはなかったけど…

つか、美咲がセンセって呼ばれてること自体、俺にはなんだかシックリこなかった。


そう思うと苦笑いが漏れ、車に乗り込んだ。
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