Existence *
「なんか、美咲に似てんな」

「え、私と似てるって?」

「制服着てるって事は現役高校生?」

「そうそう」

「綺麗な顔してんな」

「何?惚れたの?」

「なんで惚れねぇといけねぇんだよ。大人っぽいところが似てるっつったの」


あの頃の美咲もそうだった。

高校生とは思えないくらいの風貌。


「私、あそこまでギャルじなかったよ」

「そーだっけ?」

「そーだよ。天野さん、授業中、鏡見るかネイルしかしないんだもん」


困った様にため息を吐き出す美咲が本当に先生なんだと思わせる。

そんな美咲に俺はクスクス笑みを浮かべた。


「人の事、言えねぇんじゃねーの?」

「寝てる時はあっても化粧はしてませんでした」

「どっちも一緒じゃん」


笑う美咲にちょっと安堵した。

もっと気分が沈んでどうしようもなくなってんじゃねぇのか、なんて思ってたから少し安心した。

ただ、それは今だけかも知れないが、でもお母さんの状態を話せる雰囲気ではなかった。


だけど。


お風呂に入って先にベッドで寝ている美咲の隣に寝転ぶ。


「…美咲?」

「うん?」


まだ起きていた美咲に声を掛けると小さく返事が返ってきた。

俺に背を向けてシーツを被る美咲の表情など見えるわけでもなく、その美咲から視線を外した。


「大丈夫?…な、訳ねぇか」

「大丈夫だよ」

「無理しなくてもいい。…お母さん――…」

「いい。その先の事は言わなくていい。翔こそ無理して言いにくい事言わなくていいよ」

「……」


美咲はなんとなくわかっていたのだろう。


「明日、自分の口から聞いて、自分の耳で受け止めて来るから。だから翔は何も言わなくていい」

「…美咲?」

「大丈夫。大丈夫だから心配しないで」

「するに決まってんだろ」


背後からギュッと美咲を抱えて、目を閉じる。

その後の会話などなく、寝てなかった俺の瞼はいつの間にか閉じ、そのまま朝を迎えていた。
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