花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~
 そっと、労わるように、私が眠りに落ちかける頃、神宮寺くんは、私の頭を撫でる。お父さんのように。
「おやすみ花子。――また明日」
 このアパートを出る前に必ず私の頬に口づける。その、甘ったるくて切ない感情を胸のなかで抱き締めながら私は眠りに落ちる。

 *

「そっか。よかった。よかったね。うんうん」
 クリニックに行って薬を処方して貰い、診断書も書いて頂き無事私の休職は確定した。
 なんでも給与の三分の二を貰いつつ最長で一年半休めるんだとか。傷病手当金。そんな有難いシステムをいままでまったく知らなかった。
 いきなり自分が抜けて現場はどうしてるだろう。
 心配するなと、鶴橋さんは言っていた。いまは自分がよくなることだけ考えろ。
 嘘はない。実際うちの会社でも鬱で休職する人間はあまたいる。自分もそのひとりになったことに少々ショックを受けてはいるが、起きてしまったものは仕方がない。とにかく休もう。
 薬がすぐに効いて電車にも乗れるようになった。思ったよりも元気。
 残業漬けで貯まったお金をすこしは遣いたい気分。そう打ち明けると神宮寺くんは、りんごの皮を剥きながら、
「行きたいところどこかある?」
< 23 / 39 >

この作品をシェア

pagetop