花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~
 潮騒の音が耳に残る。懐かしい、波の音。

 毎日のようにあれを聞いていた頃はうんざりだったのに。いまはこんなにも恋しく感じる。――故郷。

「帰れるわけがないんだよね……」夜中、ふと目覚めた私は、自分がひとりであることに気づき、寂しくなってしまう。恋生は、私が眠るまで寄り添って、見守ってくれている。「まだ復興の真っ最中だし」

 故郷である緑川《みどりかわ》は、去年元旦の震災で酷い被害に遭い、両親も、知人も家族もみんな――。

 ああ。考えていても仕方がないのに。私に出来ることといったら、気を揉んだり、寄付をするくらいのものなのに。

 いまは自分だ。先ずは自分のことをきちんとしてから。

 恋生の献身的な看病もあって快方に向かいつつあるが、まだちょっとからだはしんどい。夜こうやって目が覚めてしまうこともある。――なんとなく。スマートフォンを手に取って、連絡先を開く。アイコンはベイマックス。意味はあるのか。

「守ってくれる……だからだよね……っと」

 いけない。ボタンをタップしてしまった。急いで切ろうと思うがその前に反応があった。「――花?」
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