花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~
 さっきまで川瀬さんと言っていたのに。いつ、花呼びが定着したのだろう。

 二十五時。普通の人間ならば、眠っている時間だ。

「どうした? 眠れない?」

 電話越しに聞く恋生の声はあまりにも優しかった。「……ごめん、間違えて通話押しちゃった……」

「そっか。じゃ、話そ?」

「恋生……」この部屋には新たな仲間たちが加わった。愛してやまない、スィリの服がこんもりと。この夏はファッションを楽しめそうだ。

「なんかね。今日あまりに楽しかったから……つい。ちょっと寂しくなっちゃった」

「すぐ行く」真夜中なのに。恋生の口調には迷いがない。「俺も会いたい。すぐ行くから、ちょっとだけ待ってて」

 御曹司様は自分でリムジンを運転してうちのアパート前に乗り付けた。真夜中だというのに、電話越しに小さく叫んで――はーな。アパートからパジャマ姿のまま飛び出した私は驚いた。

 タキシード姿の恋生が、薔薇の大きな花束を抱えて、私に手を振っていた。

 映画のヒロインになった気分だった。

 恋生は、かんかん鳴るアパートの階段をあがると、お姫様抱っこで私を運んで――それから。
< 29 / 39 >

この作品をシェア

pagetop