花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~
「ふふふ」
「……神宮寺。一人で笑うなよ。こええよ」
「顔がいいだけに不気味だよなぁ」
「んな可愛い顔してストーカーなんかしたら俺ぁロシアに飛ぶぞ」
「だーからおまえが三途の川を渡ってどうする」

 たったひとり、追い求める可憐な花の面影。
 そのことだけを思って生きてきた。
 そろそろ――頃合いか。

「そうか、なんか急に三途の花の話なんかしだすからおかしーと思ったぜ。おまえ、リンダから三途の花に乗り換えるつもりなんだろ」
「残念。――阻止する」

 酒の回った赤ら顔で全員「は?」とこっちを見る。
 正々堂々、真っ向勝負だ。

「川瀬花子は僕が落とす。――確実にね」

 人生、誰しも自分が主人公でありたい。
 この物語の主人公は僕である。正面切って、宣戦布告。
 みんなのことは勿論尊敬している。辛く苦しい研修を乗り切った仲間だ。
 だが、こんなうわさ話をするレベルの野卑な男どもに、川瀬花子を渡すつもりはない。

「結婚式にはみんな呼んであげるよ。三年後くらいかな」

 はええよ! おいなに言ってんだ! という野次には笑顔で応じる。――そう、神宮寺家の御曹司として培った、華麗で冷徹なる微笑みを。ピンチのときにこそ人間笑うんだ。確実に、あのときから胸の奥に根付いて脈々と走る感情を抱きながら。
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