シンデレラは豪雨の中で拾われる
 葛城さんの瞳は、獲物を見つけた獣のような熱と慈しむような深い愛が混ざり合っていた。そして葛城さんは、私の頬を撫でたまま、囁くような声で、しかし抗いがたい重みのある言葉を告げた。

「貴女があまりにも魅力的で、手放したくなくなってしまいました」

 困りましたね、なんて言葉が付け加えられるが、あまりにもお飾りすぎる。
 彼の目が本気だと語る。視線を逸らすことさえ許さないと言いたげな目に縫い留められ、私はただただ固まるしかない。

「ですが、貴女が嫌がることはしないと約束しました。約束はしっかりと守らせていただきますので、どうかご安心を」

 頬を撫でていた手をパッと離した彼は、爽やかに笑う。その表情には、先ほどまでの熱は見当たらない。その変わりようが無理をしているように見えてしまい、どうにも私の胸を締め付ける。

「葛城さん」
「今日はお仕事で東京まで来たのでしょう?お疲れの中、連れ回してすみませんでした」
「あの、」
「ゲストルームまでご案内しますね」

 彼はにこやかに笑い、リビングの扉へと足を進める。紳士的な振る舞いではあるが、どこか冷たい。まるで私からの言葉を受け取りたくないかのような会話だ。
 どことなく寂しさを感じてしまい、気づけば彼の背中に縋りついていた。

「…佐々木さん」
「ご自分の想いだけ伝えて、私の想いは無視ですか?」

 私の言葉に、葛城さんはピクリと反応した。でも、振り向いてくれない。
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