シンデレラは豪雨の中で拾われる
 彼の部屋に招かれ、そのままベッドに優しく押し倒される。薄暗い中で彼の瞳は怪しい光を灯していた。

「本当によろしいのですね?」

 熱を帯びた声とは裏腹に、言葉は遠慮がちだ。もう何度目かになる確認。今回も頷くと、彼は眉を寄せた。

「……」
「あの、無理しなくていいですよ…?」

 念のため伝えるも、慌てて首を振られる。そういうことではないらしい。

「……行為が目的で声をかけたと思われたくないんです」

 捨て犬のような顔で見下ろされる。その庇護欲を誘う顔に、場違いにもキュンとしてしまう。これがギャップ萌えというものなのだろうか。

「佐々木さんのことが本当に好きなんです。だから、こんなにも性急にあなたのことを抱くなんて…憚られてしまう」
「私も同意していますし、そんなこと思いませんよ」
 
  素直に伝えるも、まだ不満げだ。きっと彼の中では葛藤があるのだろう。
 それにしても、彼からの直球な言葉に素直に照れてしまう。惜しげもなく愛を伝えられるのも、また体力を使うものだ。

「…折角なら、名前を呼んでくれませんか?」

 甘えたようにお願いすれば、これまた面白い反応をされる。先ほどまで遠慮がちだった顔は、何故か真顔。いよいよリミッターが外れたらしい。顔の横に置かれたシーツが強く握られた。

「美玖さん」
「ふふっ、ありがとうございます、葛城さん」

 お酒の力も相まって、大胆な反応ができてしまう。明日記憶が残ったら羞恥心で死にかけると思うが、それもご愛敬だろう。
 私の反応とは対照的に、彼は少しだけムスッとすると口を開いた。

「……私も、名前で呼んでほしいです」
「玲央さん、でいいですか?」
「呼び捨てでは呼んでくれないんですか?」
「さすがに勘弁してください」

 私の返事に、葛城さんは柔らかい笑みを浮かべた。
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