シンデレラは豪雨の中で拾われる
「…葛城さんは、どうして私にここまでしてくださったのですか?」

 もう一度だけ聞いておきたかった。思い切って口にすると、彼は私の手をそっと自分の手の平で包み込んだ。

「惚れたから、と言ったでしょう。嘘ではありませんよ。それに、昨夜を共にしてあなたへの気持ちは強まりました」

 失望することも飽きることもなかったと。嬉しく感じる一方で、どこか申し訳なく思ってしまう。
 
「……最後まで優しいんですね」
「ははっ、昨夜の手荒さを見ても尚『優しい』と言ってくださるのですね。あなたこそ、お優しいではありませんか」

 熱と共に愛を滲ませた彼の声。それに影響されて昨夜の情熱的な時間を思い出してしまえば、顔に熱が集まって仕方ない。

「でも…私は、葛城さんが暮らしているような世界の人ではありません。昨日、色んな所に連れて行っていただいて、改めて思いました。私は、ただのOLです。満員電車に乗って、パソコンと睨めっこして…そんな日々を送っています。……葛城さんの隣には、もっと相応しい人がいるはずです」

 __そして、それは私ではありません。

 これが私の偽らざる本音だった。
 ハイブランドのブティック、高級な食事、そして彼の家にまで招待された一連の流れは、まるで一晩限りの魔法にかかったシンデレラのようだった。そして、この魔法は新幹線が動き出すと共に解けなければならない。
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