シンデレラは豪雨の中で拾われる
 数時間後、情報はすぐにまとまった。彼女が働いている会社は、幸運なことに我が社と同業界であることが判明。調べ進めると、技術と資本を今まさに必要としていることも明らかになった。そして、我が社はそれを補うことができる。
 私欲と思われかねないが、見積もりの段階でも損はない。ビジネスとしても、しっかり成立することが予想された。

(これだけ根拠があれば、プロジェクトのお声がけができるはず。そして、きっと受け入れていただける)

 パソコンで引き続き作業をしていると、スマホが震えた。どうやら鞄に忍ばせた鍵が彼女に見つかり、電話をかけてくれたようだ。 
 私の電話番号は渡す機会が無かったため、彼女が風呂に入っている間に勝手ながら電話帳に登録させてもらった。若干の申し訳なさとモラルの欠けた行動に躊躇したが、手段を選んでいられるほど大人にはなれなかった。あと、見える範囲でスマホのパスワードを打ち込むのはどうかと思う。私みたいな悪い男に利用されても、文句は言えないだろう。

 でも、これで彼女の私用の電話番号を合法的に手に入れることができたわけだ。かかってきた彼女の電話番号を、すぐさま自分のスマホの電話帳に登録したのは言うまでもない。
 
(ああ、早く会いたい。どれだけ、私に抗う姿を見せてくれるでしょうか)

 彼女が自分から距離を取ろうとしていることは分かっていた。
 それを見越しての数々の布石。一目惚れした女性をやすやすと帰すほど、自分は優しくない。
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