水魔法をまっすぐにしか飛ばせない落ちこぼれ令嬢ですが、意外とお役に立てそうです
「ナディナ様、魔法って本当にすごいですね……! こんなこともできちゃうなんて……!」

 突然のことに驚いて顔を上げる。するとアルテアが目を輝かせていた。
 何度も手に力を込めて、感動した眼差しでナディナを見る。

「私、魔法自体を見る機会が滅多にないんです。この領地ではほとんどの人が使えませんし。すごいなあ、憧れちゃうなあ……」
「いえそんな、私の魔法なんて全然大したことなくて」
「何をおっしゃいますか! だって魔法って、確か本来は使う前に詠唱?をするんですよね? ナディナ様、今いきなり魔法を出されていたじゃないですか。それってすごいことなんですよね?」
「――! それは……」

 思いも寄らない褒め言葉にナディナは目を見開いた。
 耳まで熱くなり、アルテアから顔を逸らしてしまう。
 エリート魔導師一家と呼ばれる実家ではあまりにも当たり前のことすぎて、ナディナ自身もなんとも思っていなかった。

 どきどきする胸を押さえながら、胸の内で呟く。

(ずっと『お前は落ちこぼれだ』って言われ続けてきたけど、ここでなら、誰からも落ちこぼれ扱いされない……のかな)

 もう一度、手をかざして水魔法を泥の壁に当てて、手を上下に動かす。長方形の形に泥が落ちる。
 泥のくすんだ色と、本来の壁の色とのコントラストはまるで壁に絵を描き出すかのようだった。
 しかも魔法の水を掛けているせいなのか、アルテアが話していたような、すぐに泥が元に戻っていく気配もない。

 弱い魔法でも、こんな使い道があったなんて……!
 嬉しさが込み上げてきて、目の奥が熱くなった。

 改めて屋敷を見上げて、きゅっと両手を握りしめる。


 ――私の水魔法で、このお屋敷の泥をきれいさっぱり洗い流してみせる!


 ナディナは気合を入れると、壁に向かって水魔法を放ち始めたのだった。

〈了〉
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