水魔法をまっすぐにしか飛ばせない落ちこぼれ令嬢ですが、意外とお役に立てそうです
 夢で見た前世の光景が、いきなり頭によみがえった。
 父親が、高圧洗浄機で洗車していた光景。

「あの、これ……私の水魔法でお掃除できるかも」
「えっ」

 アルテアが目を丸くする。

「魔法でそんなことできるんですか!?」
「やったことはないんですけど、できそうかなと思って」

 魔法のコントロールは苦手でまっすぐにしか飛ばせないけど、ある程度強弱は付けられる。
 夢で見た、前世の父親が洗車している様子を頭に思い浮かべる。あんな感じで水魔法を勢いよく壁に噴射したら、泥汚れを落とせないかな。

 手の中に魔力を溜めて、水魔法を足元に放つ。相変わらず一直線にしか放出できない。

(でも、水の幅を細くしたら水圧が高まらないかな)

 ナディナは屋敷の壁に歩み寄り、もう一度水魔法を出した。
 普通に出すだけでは泥が濡れるだけだ。
 高圧洗浄機をイメージしながら水を細くしてみる。水圧が高まる。

 手のひらから扇状に放たれた水が、泥の壁に一本線を描き出した。

「できた……!」

 泥が落ちた中から、元の壁の色が現れた。
 魔法の練習のときは、ひたすら量を多くすることしか考えていなかった。そうしないと魔物と戦えないから。

 と思った瞬間、アルテアが近くで見ていることを思い出し、かっと顔が熱くなった。
 きっと私の魔法、「大したことないな」って思われてるんだろうな。姉や両親なら『偉大なる魔法をたかだか掃除に使うなんて!』とあざ笑ってくるに違いない。

 声まで聞こえてきた気がして胸が苦しくなる。魔法を止めてうつむく。
 するといきなりアルテアがナディナの両手を取り上げた。
< 9 / 10 >

この作品をシェア

pagetop