水魔法をまっすぐにしか飛ばせない落ちこぼれ令嬢ですが、意外とお役に立てそうです
「旦那様って、人様と接する機会が少ないせいか話し方がそっけなくて、ぶっきらぼうな印象を与えてしまいがちなんですよね」
「なるほど……」
「貴女様の痛ましいご様子にとても胸を痛めていらっしゃいましたよ。『怪我は魔法で治せても、心の痛みはそう簡単に癒えるものではないから充分に労わるように』と申し付かっております。なのでどうぞ遠慮なく、ゆっくりお過ごしくださいね」
「それは、恐れ入ります……」

 心の痛み。馬車で事故に遭ったからだけじゃなく、実家に居る間、きっとずっと感じていた。
 目の奥が熱くなる。
 侯爵様って一見冷たく見えたけど、本当はお優しい方なんだ。

 一方で、分不相応な扱いをされている申し訳なさに焦りを覚える。
 少しでも早く、何か恩返ししないと――!

 と思ったものの、焦りで頭が回らない。
 役に立つにはどうしたらいいんだろう。

「あのっ、何かお手伝いをさせてもらえませんか? メイドさんの仕事はしたことないですけど、教えていただけたら……」

 ナディナの申し出に、メイドが目を丸くする。

「とんでもない! お客様に我々のお手伝いをしていただくわけには参りません!」
「お客様!? 私が!?」
「もちろんです! ナディナ・アルカンティエ様。貴女様は客人として扱うよう、旦那様より仰せつかっております」
「そんな、私なんかが……」
「我々召使いも、久しぶりのお客様なのでみんな張り切ってるんです。ですのでナディナ様、どうぞごゆっくりお過ごしくださいね」
「と言われても、何をしたらいいんでしょう……」
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