水魔法をまっすぐにしか飛ばせない落ちこぼれ令嬢ですが、意外とお役に立てそうです
 クロノヴィエ侯爵は早口でそう言うと、すぐに背を向けて部屋を出ていった。
 続けて執事が頭を下げ、扉の向こうに消えていく。

 あっという間の出来事に、ナディナはぽかんとしながらぽつりと呟いた。

「休めと言われても……休む理由がないというか……」

 今さら気付いたけど、どこも痛くない。絶対大怪我をしたはずなのに。
 どうしてかしらと首を傾げていると、メイドが説明してくれた。

「治癒魔導師の方をお招きし、外傷はすべて治癒済みです」
「えっ! 治癒魔導師!?」

 ほとんどの怪我を魔法で治してくれる上位魔導師。
 人数が少ないから簡単に呼べるものでもない上に、一回呼ぶのに最高級ドレス十着分以上の金額が掛かるって言われてるのに!

「見ず知らずの私が、こんなに良くしていただいちゃっていいんでしょうか……」
「ご安心ください。旦那様はとてもお優しい方ですので」
「優しい?」
「はい。貴女様と一緒にいた御者も馬もお助けして、既に貴女様の御実家にお帰りいただいております」
「あ、そうなんですね……」

 私だけじゃなくて御者の方も馬も助けてくださったなんて。
 でもさっきは冷たい態度だったような――。
 とナディナが思っていると、メイドがくすくすと笑い出した。
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