水魔法をまっすぐにしか飛ばせない落ちこぼれ令嬢ですが、意外とお役に立てそうです
 侯爵邸は恐ろしいことに、壁一面が泥だらけになっていた。

 端から端まで見渡す限りの泥、泥、泥。

「どういうこと!? なんであんなに泥だらけなんですか!?」

 思わず叫んでしまい、咄嗟に口を押さえる。
 するとアルテアが苦笑いを浮かべた。

「まあ……驚かれますよね。実は、旦那様は遺物収集家(・・・・・)でして」
「遺物収集家?」

 それと屋敷が泥だらけなことと、どう関係があるんだろう。
 とナディナが小首を傾げていると、アルテアが困った笑顔のまま話し始めた。

「遺跡から発掘された、一点ものの泥人形がありまして」
「はあ」
「それを旦那様がこのお屋敷にお持ち帰りになった次の日には、こうなってました」
「怖っ! それって絶対人形のせいじゃないですか! 呪いの人形だったってことですか? 『遺跡から持ち出してはならぬ』みたいな」
「でも呪術師に見てもらっても『これは呪いではなさそうだ』って言われたそうで。でもお掃除したそばからじわじわと泥が復活していってしまうんです。それで、泥人形を遺跡に戻すか持ち続けるかと迷った結果、泥人形を選んだ、ということです」
「なるほど……」

 こんな目に遭っても手放さないなんて、コレクター気質ってすごいな。
 と思いながらナディナは改めて泥まみれの屋敷を見上げた。その瞬間。
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