推しで一途な婚約者は、国一番の人気者!つまり毎日が修羅場です。

3章「vs麗しきご令嬢」_13話:アルフレードと愉快な友人たち

忙しさに身を置いていると、時間の経過はあっという間である。

アンジュとの生活が始まり、そろそろ1ヶ月が経とうとしていた。
アルフレードは非常に充実した日々を送っている。好きな人と屋根の下で、同じ時間を過ごせるのだ。お互い生活習慣が違うため、気になったところばあれば擦り合わせ、調節している。今のところ、大喧嘩には至っていない。
結婚しなければ叶わないと諦めていた時間が叶っている。
何より令嬢との接触が減っているそうなのだ。以前”アルフレード”との件で令嬢と言い合いをして帰ってきたアンジュは、ひどく疲弊していた。それからできる限りの時間、アンジュと共に過ごすようにしたのだ。朝の出社から、夜の帰宅。休日の買い物も、ちょっとの散歩も。令嬢が近くまで来ている気配はするが、”アルフレード”から厳しく制限されたのを守っているようなのだ。精神的負荷が軽減されたアンジュは以前の笑顔が戻ってきた。

『ありがとう、アルフレード。けどずっと私と付き合うのも大変でしょ?楽しんできてね』

最愛の女性の側に入れるのだ。何も大変なことはない、がアンジュが気を使ってくれた。
そのため、この日仕事を終わらせたアルフレードは、アンジュを借家に送り届けると、そのまま一軒の酒場に向かった。

「お、来た来た」

「久しぶりだな。アルフレード」

「私は、昨日ぶり」

酒場の扉を開けたアルフレード。薄暗い店内に、かすかにアルコールと肉が焼ける匂いが漂っている。彼に気がついた1人が、名前を呼ぶ。店内の奥には待ち合わせしていた3人の若者が席についていた。

北区配属のアーチボルト・ナンブ。
東南区配属のニコスヒメネス。
そして同じ中央区配属、特別訓練時にアルフレードを呼びに走りに来てくれた、ヴァレンティーノ・コンティ。
彼らはアルフレードが軍学校時代に初めて得た、友人である。入学式にニコスヒメネスを倒れたのを助けてから、仲良くなった4人。アルフレードがアンジュに片思いをしていると知れば、手を貸したり、知恵を貸すこともあった。
彼らと初恋の人のおかげで、アルフレードの学校生活はとても充実した。配属先が分かれた男子4人は頻繁に手紙のやり取りをしている。意外にも4人全員、筆まめであった。便箋にこだわるヴァンテーノに、仕掛けを施すアーチー、変わらずシンプルな手紙を送るニコスヒメネス。そしてアンジュとの手紙のやり取りで得たスキルで、シールやら切手など細かな部分にもこだわりを見せるアルフレード。実に個性あふれる手紙交換が行われている。
花祭りが開かれるにあたり、各区警備要員補充のために兵士の一時異動や配置換えが行なわれる。今回は全員中央に集まれた。半年ぶりに全員が集まれると、アーチが『呑みに行こうぜ』と声をかけてくれたのだ。

アルフレードが頼んだ飲み物も手元に、乾杯。
お互い近況を報告するだけで、盛り上がる。

「アンジュ・ブルナー、本当に中央にいるのな」

「なんだい、信じてなかったのか?今日だって、訓練の教官として訓練員を薙ぎ倒してたよ」

話はアルフレードの婚約者、つまり長年の片思い相手であったアンジュに変わる。アルフレードと同期、つまりはアンジュも知る彼ら。アーチーとニコスヒメネスは、アンジュとララとも同じクラス。クラスでの対戦訓練ではよく組みになっていた。
ヴァレンティーノに至っては、彼の兄の結婚相手、つまり義姉はアンジュの親友の1人であるビアンカであり、彼はアンジュとの面識があった。

「でもなんで中央に?此処じゃ活躍なんかできないだろ。班組なのにもったいねぇ」

「何言ってんのさ。場所が変わろうと仕事は変わらない。ま、持て余してるのは事実だけどね」

化け物娘と悪名高い噂をものともしない3人ーニコスヒメネスに関しては、彼女のポエテランジュの気配を敏感に感じ取り、度々倒れていたが、彼女を尊敬していたーは、それぞれアンジュとも関わりを持っていた。その実力もよく知っている。

「東南区では今でも話題に上がる。『ならこっちにも欲しい』って。…まだ挨拶してないから、久しぶりに会うかな」

「大丈夫か?倒れるなよ?」

アーチーの心配に、ニコスヒメネスは拳を握る。

「あれから何年も経った。大分強くなった、はずだ…!」

アルコールの力で力強く宣言した彼が、翌日ぶっ倒れる事になるが今は関係のない話。

「ま、アルフレードとしては嬉しいよなぁ。最近貰う手紙、そんな話ばっかだもんな!」

「うまくいってるなら良いよ。と、まぁなかなか難しいけど」

アルフレードは思わず顔を引きつらせる。その様子に、アーチーらは察した。

「…また面倒に巻き込まれてんのな」

「だから目があるのかぁ」

ニコスヒメネスは窓の外に目線を移動させる。そこには多種多様な生き物が、アルフレードをつぶさに監視していた。

「ねぇニコ、飲みすぎじゃない?」

言葉の端が間延びしているニコスヒメネス。その顔は赤く、体全体が揺れている。ヴァレンティーノの問いかけに、彼はアルフレードの背中を叩いた。

「気にするなアルフレード!お前の愛は唯一だ!」

耳に入っていない。完全に酔っ払っている。

「ダメだこれ!」

「水だ、たくさん飲め」

ニコスヒメネスがそのまま寝落ちるハプニングもあったが、のんびりと友人たちと時間を過ごしたアルフレード。いつもは飲まない度数の高い酒も楽しみながら、弾む話に乗る。
起きた友人と改めて飲みなおしていたら、4時間も経っており、明日も仕事の4人は素直に帰ることにした。

「いやぁ、楽しかった!また会いたいな」

「あぁ、たのしかった。気をつけて、帰ってくれ」

手を振り別れを告げる。
アルコールで意識がふわつくも、しっかりとした足取りで帰路に着く。

「あぁまた明日…ってあれ?」

「…あ、そうだ!おい、アルフレード?」

ヴァンテーノとアーチーが慌てて引き止めるも、アルフレードの背中はすでに遠かった。

「……いいか、ま。帰ったんだしな」

「うん。アルフレードは真っ直ぐ家に帰ったんだ。全く、変わらんな」

事前に聞いていた予定と違う方向に、中央広場へ向かって行ったアルフレード。あの場所にいる人物が、手紙に書かれていた彼女ならばさぞや驚くだろう。
素直に見張もついていく。問題ないと判断した瞬間、3人は思わず顔を見合わせて笑ってしまう。

「彼も帰ったんだし、私たちも帰ろう。明日いじる話題ができたってことで」
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