シンデレラ・スキャンダル


Legacyのメンバーが到着したからか、その夜のホームパーティーは盛大に行われていた。

Legacyの曲が会場に響き渡る。ボーカルの龍介さんと優斗くんが、互いに向き合い、声を重ねた。まるで光の粒が空中で溶け合うように、二人の美しい声が混ざり合い、それだけで、まさに一つの芸術となる。

その瞬間、部屋に流れていた雑多な空気は一変し、心地よい緊張感に包まれた。二人の歌声の神聖さを際立たせるためかのように、バックで鳴っていたはずの他の楽器の音がふっと消え、世界が二人の声だけに集中した。

その様子は、まるで二人にだけ強烈なスポットライトが当てられ、周囲が深い影に沈んだかのように。

優斗くんは明るい笑顔を龍介さんに向ける。龍介さんもまた、それに応えるように穏やかに微笑み、視線を交わしながら楽しそうに歌い続ける。彼らの間には、言葉を必要としない、深い理解と絆が存在していることが、その一挙手一投足からわかった。

それは、長い時間を共に過ごし、数えきれないほどの困難と歓喜を共有してきた“相棒”だけが持ち得る、絶対的な信頼関係の証。

歌のブレスの瞬間、ふいに龍介さんの視線がわたしを捉えて、彼はいつもの、安心感を与えるような優しい笑顔を向けた。いつもなら、それだけでわたしの心は満たされるはず。でも、今のその笑顔は、何故かひどく遠い場所に感じられてしまう。まるで分厚いガラス越しに見ているかのような、透明でありながら決して超えられない壁の向こう側。

手を伸ばしても、どれだけ足掻いても、彼の温もりに触れることは叶わない。そんな絶望的なほどの距離感が、彼らの奏でるあまりにも美しい、澄み切った歌声に乗って、わたしの心を容赦なく打ちのめしていく。

ただ、ただ……輝かしい彼らを、手の届かない場所から見つめることしかできないのだ、と。
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