シンデレラ・スキャンダル
龍介さんの逞しい腕の中に抱かれて、わたしの小さな体はすっぽりと収まっていた。この温もりから離れたくない、という抗いがたい感情が、涙腺を緩ませる。

「日本でなにかあったら、ちゃんと連絡してね」

彼の声は、いつも通りの穏やかさを含んでいるけれど、その奥で微かに震えている。わたしの髪を撫でる手が、少しだけ力を込める。

「はい」

「やっぱり……なにかなくても連絡してね」

「はい」

「電話するから出てね」

拗ねたような、けれど真剣なその口調に、思わず笑みがこぼれる。

「ふふ、はい」

彼の大きな指が、少しだけ頬に残った滴を優しく拭い、わたしの髪をもう一度、ゆっくりと撫でていく。その指先の微かな震えが、ただ愛おしくて。涙は溢れていくのに、頬は緩んでいく。

そして、わたしたちはゆっくりと離れてから別れた。ゲートが開き、搭乗口に人が流れ込んでいく。もう一度だけ振り向いて、瞼の裏に浮かべる。龍介さんの、切なげな、でも力強い微笑みを。

飛行機が滑走路を離れる。機体が上昇するにつれて、窓の外の景色はみるみるうちに小さくなっていく。鮮やかな緑の島。エメラルドグリーンからコバルトブルーへと色を変える、どこまでも広い海。そして、すべてを包み込むような、オレンジ色の夕陽。

わたしはシートに深く背を預け、静かに目を閉じた。次に瞼を上げたら、そこはもう戦場だ。魔法は解けた。でも、わたしの胸には、消えない熱が残っている。

——龍介さん。 わたしは、強くなるから。
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