シンデレラ・スキャンダル
「あ、あの……終わりました?」

「うん。今、帰りの車」

「え? もうですか?」

「終わってすぐ出てきたから」

 相変わらずの早さに思わず笑いがこぼれてしまう。衣装のままでもすぐに退出する龍介さんは、業界じゃ有名らしい。

「ふふ。お疲れ様でした」

「うん、ありがとう」

「あの、龍介さん。今度、ディアブロとの食事会があるって聞いてます?」

「ああ、さっきなんとなく聞いた。CMに優斗が出るみたいで。あとは俺たちの曲を使ってもらえるんだ」

「龍介さんは、行きますか?」

「んん……どうかな。なんで?」

「あの、秘書も出ることになったみたいで。わたし、行かなきゃいけないんです。担当の役員も出るから」

「……そっか。そうすると」

 彼の声の温度が、すっと下がるのが分かる。 怒っているんじゃない。心配しているのだ。わたしが傷つかないかを。その沈黙が、会いたいという気持ちと、会うことへの恐怖を同時に掻き立てる。

「あ、いいや。うん。俺はまだスケジュールがどうなるかわからないから」

「そう、ですよね。もし一緒だったらと思って」

 落胆と安堵が胸の中に渦巻いて、よくわからない短い息を吐く。龍介さんには会いたいけれど、その場では会いたくない。

 声が聞こえなくなった携帯電話を見つめて、もう一度、今度は深く息をはいた。
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