シンデレラ・スキャンダル
25話 優しい嘘と、本当の気持ち
◇◇◇
Legacyとの会食を二日後に控えた火曜日、わたしは参加していたレセプションパーティーが終わると同時に会場を飛び出して、タクシーに乗っていた。
小さなバッグの中から携帯電話を取り出してみると、何かの連絡がきているようで、ランプが光っている。
栞ちゃんか、龍介さんか、二人の顔を思い浮かべながら確認してみると龍介さんの方で、着信時間からもう一時間も経っている。迷いながらも少し期待を込めて発信してみれば、コール音が鳴り始めてすぐに低い声が聞こえてきた。
「あ、綾乃。ごめん。今ね時間なくて」
「じゃあ——」
「これから収録なんだ。あと、明後日なんだけど、俺は行けないって」
「そう——」
「ごめん! もう出なきゃ」
「い、いってらっしゃい!」
「いってきます」
どうやら本当に収録直前だったようで、電話の向こうから畑中さんの「リュウ、早くして!」と呼ぶ声が聞こえた。どうにか「いってらっしゃい」とだけは伝えることができて、息をつく。
通話が切れたあとも、携帯電話を握りしめた手が温かい。たった一分。それでも、耳の奥に残る彼の低い声が、疲れた体にじわりと染み渡る。
忙しいときは、電話もメールもできないことがあると言っていたのに。仕事ばかりを優先しちゃいがちだから、先に謝っておくと言っていたのに。龍介さんは、ある意味、嘘つきな人。
『明後日なんだけど、俺は行けないって』
その言葉に、正直ホッとした。卓也がいる場に、彼が来るなんて想像しただけで胃が痛くなる。 でも……
「会いたかったな」
ポツリと零れた本音が、タクシーの窓ガラスに白く曇った。
Legacyとの会食を二日後に控えた火曜日、わたしは参加していたレセプションパーティーが終わると同時に会場を飛び出して、タクシーに乗っていた。
小さなバッグの中から携帯電話を取り出してみると、何かの連絡がきているようで、ランプが光っている。
栞ちゃんか、龍介さんか、二人の顔を思い浮かべながら確認してみると龍介さんの方で、着信時間からもう一時間も経っている。迷いながらも少し期待を込めて発信してみれば、コール音が鳴り始めてすぐに低い声が聞こえてきた。
「あ、綾乃。ごめん。今ね時間なくて」
「じゃあ——」
「これから収録なんだ。あと、明後日なんだけど、俺は行けないって」
「そう——」
「ごめん! もう出なきゃ」
「い、いってらっしゃい!」
「いってきます」
どうやら本当に収録直前だったようで、電話の向こうから畑中さんの「リュウ、早くして!」と呼ぶ声が聞こえた。どうにか「いってらっしゃい」とだけは伝えることができて、息をつく。
通話が切れたあとも、携帯電話を握りしめた手が温かい。たった一分。それでも、耳の奥に残る彼の低い声が、疲れた体にじわりと染み渡る。
忙しいときは、電話もメールもできないことがあると言っていたのに。仕事ばかりを優先しちゃいがちだから、先に謝っておくと言っていたのに。龍介さんは、ある意味、嘘つきな人。
『明後日なんだけど、俺は行けないって』
その言葉に、正直ホッとした。卓也がいる場に、彼が来るなんて想像しただけで胃が痛くなる。 でも……
「会いたかったな」
ポツリと零れた本音が、タクシーの窓ガラスに白く曇った。