シンデレラ・スキャンダル
「ああって! これを見ればLegacyがどれだけ素敵なグループかわかりますから。綾乃さんがおっしゃっていたんですよ。取引先やクライアント、関係各社のことをきちんと調べておくのも秘書のお仕事だって」

「そう、そうでしたね」

「見返りはYUTOのサインで結構ですから!」

 優くんのサイン……きっと、喜んでしてくれる。

「ハイ、ガンバリマス」

「それにしても、綾乃さんがあの人のところで働くことになるって意外でした」

「卓也のところ?」

「はい。だって、今まで何回もそういうお話が出たけど、実現したこと一度もなかったじゃないですか。なんかあの人って口だけっていうか……」

「まあ、確かにね」

「それなのに今回は違いましたよね。綾乃さんがお仕事辞める時期と重なったこともあるかもしれないですけど……」

 栞ちゃんがなにかを考えるようにして言い淀む。

「綾乃さんのことをちゃんと待っていたところが気になるんですよね。そういえば、相談ってなんだったんですか?」

「ああ、そういえばまだ聞けてないわ。もう聞く気もあまりないんだけど」

「あの人の場合、『ヨリを戻す』なんて可愛らしいもんじゃない気がするんです」

 栞ちゃんが、グラスの縁を指でなぞりながら眉をひそめる。

「とんでもないことを言い出してきそうで……」

 今までのことがあるからだろうけれど、考え込み始めてしまいそうな栞ちゃんに「でも大丈夫」とはっきりと伝える。

「もうきっと相談なんてないのよ。それになにを相談されても聞く気はないから。好きな人ができたって言ったの。プライドが高い人だからきっと」

「え、え? 好きな人? 綾乃さん、好きな人できたんですか?」

 テーブルの上に乗り出して、わたしの顔を覗き込む彼女の大きな目を見つめ返す。

「ハワイで……出会った人と」

 出会いを説明しながら、どんどん自分の声が小さくなっていく。今までどんな男の人の話をしても恥ずかしく思うことなんてなかったのに、龍介さんの話は上手く言葉が出てこない。

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