シンデレラ・スキャンダル
「なにそれ! 運命みたい」
「そう、なのかな。どうなんだろうね」
「そして綾乃さんが可愛い!」
「いや、別に」
「で、お仕事はなにをされている方なんですか?」
その質問に、心臓が跳ねた。視線を落とすと、テーブルの上に積み上げられたCDジャケット。その一番上で、金髪にサングラスの『RYU』が、不敵な笑みを浮かべてこちらを見上げている。
喉まで出かかった言葉を、ハイボールと一緒に飲み込む。 目の前の栞ちゃんは、何も知らずに瞳を輝かせている。
「お仕事は……」
LegacyのRYUだとそのまま告げることができたなら、どれだけいいだろう。アーティストで、ボーカリストだと。
「詳しくは知らなくて……」
わたしはジャケットの彼から目を逸らし、嘘を重ねた。
「あ、そういえば、YUTOのサインって」
無理矢理変えた話題だったけれど、栞ちゃんは大好きなYUTOの話だったからかすぐに応じてくれて、特に不思議に思っていないようだった。もう言葉を挟む暇もないほどに、彼女は嬉しそうにLegacyの話を続けている。
彼らの場合、ルックスに惹かれたという人たちも多いけれど、その生き方や考え方に共感するファンが多いと畑中さんが言っていたことを思い出す。ストイックさは男女問わずに魅了するのだと。
今や日本一のアーティストとも言える。芸能人との恋は、正直わからないことばかり。LegacyのRYUに恋人がいるということが、芸能界に疎いわたしにはどれだけ影響が大きいことなのかもわからない。
だから、わたしは慎重になって、妹のような栞ちゃんにさえも口をつぐむ。その後もLegacyの話は続いて、わたしがお店を出たのは終電間際だった。