シンデレラ・スキャンダル
「うまい」

その声と共に、彼の口に運ばれていく切り立てのパパイヤ。その美味しさに目を見開く様子が、なんだか子供のようだ。そして、目の前に突然、その甘い果実が差し出された。

「はい、どうぞ」

彼の指先が、わたしの唇に触れるか触れないかの距離で止まっている。

「あ……」

「食べない?」

「食べ、る」

わたしはあまり動けずに、どうにか唇を動かして小さく口を開けた。差し込まれた果実の甘さよりも、彼の指先の熱が唇に残ったような気がして、胸が少しだけ騒がしい。

「うまいでしょ?」

まるで自分が作ったかのように、そう言って得意げに笑う彼の顔は、朝日に照らされている。

龍介さんは、感情が顔によく出る人だと思う。嬉しいときは嬉しい、楽しいときは楽しい、そして、幸せなときは幸せ。そう感じて、涙まで流してしまう人。そんな彼を綺麗だと思う。

だからなのか、龍介さんがいる空間はいつも眩しい。朝日が差し込むキッチンは、わたしたち二人の笑い声が溢れていく。
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