シンデレラ・スキャンダル


​​朝食を食べ終えた後、約束どおり、近くの公園に来た。黒い帽子に黒のジャージ、赤い靴を履いた龍介さんは、どこか様になっていて、金色の髪には黒と赤が良く映えるのだと初めて知った。

「龍介さん。わたし、懸垂を見てみたいです」

「いいけど、ちょっと特殊なんだよね。腹筋つけたいから足上げるの」

「足?」

ジムで懸垂をしている人の姿を思い出すと、みんな大抵、後ろに足を上げていたはず。

特殊とはどういうことだろうと首を傾げているわたしをそのままに、彼は「こうやって」と言いながら勢いをつけて鉄棒に飛びつき、ぶら下がると、両足を前側に九十度持ち上げて、そのまま顔を鉄棒の上まで出すように何度も体を持ち上げる。

「えええ! うそ! すごい!」

何度も何度も規則正しいリズムで続くその運動は、彼がやるととても簡単そうに見える。二十回続けて、鉄棒を離して地面に降り立つと同時に、彼が「ああ!」と叫ぶ。

「きっつ!」

鉄棒から降り立った彼の首筋を、一筋の汗が伝うのが見えた。

「龍介さん凄すぎます! 初めて見ました。どうしてあんなのできちゃうんですか。龍介さんは一体何者ですか。や、やっぱり格闘家なんですね」

「え、格闘技? 空手ぐらいしかやったことないけど」

「あんなの初めてです。だって——」

「さ、どうぞ」

「——はい?」

「綾乃ちゃんの番だよ」

彼が少し息を切らしながらも、わたしを促すように鉄棒に向けて手を差し出すと悪戯な笑顔をこちらに向けた。

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