シンデレラ・スキャンダル
鉄棒自体、中学生の時以来触っていない。小さく「無理」と呟きながら首を横に振る。

「大丈夫だよ」

「や、やったことありません」

「できるかもよ。ほら支えるから」

「ええ……」

促されるままに背の低い方の鉄棒にむけて手を伸ばし、飛びついてみる。固い鉄の棒は少しだけ冷たくて、なんとも懐かしい感触。

さっき見た龍介さんを頭の中に描いて同じようにやろうと試みるも、一ミリとして体が上がる気配がない。鉄の棒にしがみついている手のひらは既にジンジンと微かに痛みを覚えて、ぶら下がる以上のことができない。

腕も背中もお腹も、そしてなんなら足にも力が入っているはずなのに、動く兆しが感じられない。

「うぅ」

「綾乃ちゃん、懸垂……」

「やってますっ」

「嘘でしょ。ぶら下がり健康法でしょ?」

「違い、ますよっ」

「いやいや」

鉄棒にぶら下がって、なんとか懸垂をしようとしているわたしを見て、龍介さんが腰を曲げお腹に手を当てて笑っている。

「くぅぅっ!」

「あはは! ヤバ!」

耳に届く龍介さんの笑い声。わたしのお腹はただでさえ張り詰めているのに、その笑い声のせいで、バイブレーションのように細かく動く。

その震えはとうとう手まで伝わってきて、鉄棒を掴む最後の力を奪い去った。手を離して地面を踏み、まだ笑っている人を睨む。
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