シンデレラ・スキャンダル


そうして話している間にも、みんなのグラスの中の液体は次々に空になり、龍介さんが再びみんなに注いで回る。

わたしは、キッチンに戻り、冷蔵庫を開き、その先にあった光景に口を開いた。まだ始まって数十分しか経っていないのに、もう準備したお酒が半分もない。集まったみんなのお酒の強さを表すように、部屋の一角には、空になったボトルたち。

パーティーが進むにつれて、その速さは衰えるどころか増していく。今日は夜までと言っていたはず。まだ夕暮れ前だと言うのに、この残りの量は心許ない。何度目かわからない冷蔵庫の中身確認。そして、会場確認。やっぱり、足りない。

ソファに座っていた龍介さんの元に歩み寄り、肩を指でつつく。

「ん?」

「お酒が足りなさそうなので、買ってきますね」

「え? もう?」

「はい。皆さん凄いスピードです」

「俺も行くから一緒に行こう」

「え、でも龍介さんは」

いわば、この家の主で、このパーティーの主催者である。その人が抜けても良いものか戸惑っているわたしに対して、彼は普通に「行こうか」と言った。わたしに黒い帽子を被せて自分自身も同じく帽子を被る。
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