シンデレラ・スキャンダル
もう怖いところなんて一つもない。彼の大きな優しさに触れたから。その温かさに包まれたから。出会ってからずっと、わたしは彼の優しさに守られている。

初めて顔を合わせたのは、五日前の飛行機の中。たった五日——。たった五日しか経っていないなんて嘘みたいだ。だって、わたしの心臓は彼を見つめるだけで騒ぎ出すから。

「龍介さんに会えて、本当に良かったです。こんなに幸せな時間は初めてで」

「俺もあの時、綾乃ちゃんを見つけて良かった。綾乃ちゃんがいるから今までとは違う。こんなに……」

途切れた言葉の先を聞きたくて、龍介さんの顔を見る。瞳が月の明かりを反射して揺らめいている。

ラグの上に置いたわたしの手に、彼の大きな手がゆっくりと重なる。一瞬そちらに意識を奪われた瞬間、もう一つの手が、そっとわたしの頬を包み込んだ。

「……綾乃ちゃん」

囁くような声。微かな月明かりの下、彼の視線がわたしの目から、ゆっくりと唇へと滑り落ちる。その視線だけで、唇が熱を持つ。
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