七つの海を渡る愛 ~Love Ocean~
「頼む、見逃してくれ! 他の宝はいくらでも持って行って構わん! だがその金だけは……」

「イヤだね。見逃す気はないよ」

 レイラは腕を組んで土下座までしているウォルティンを見下ろしながら、冷たく言い放った。

「よお、大将。じゃあこうしねぇか? 船底にあった宝は全部置いてってやるから、ここにある金は俺たちに全部よこすんだ。それで今回は引き揚げてやるよ」

「う……っ、そっ、それは……」

 詰まったウォルティンに、キャプテン・ブライスがさらに畳みかける。

「お前の選択は二つに一つだ。ここにある金だけ俺たちによこして帰すか、それとも宝だけを俺たちによこし、金を積んだまま海軍に見つかって船ごと摘発されるか。まあ、どのみちこの商会は終わっちまうがな」

「…………分かった。その金は持っていけ。さっさと行ってしまえ」

 彼の答えに、船長親子はにんまりと満足げに笑った。

「よぉし! レイラ、下の階にいるやつら全員、ここへ呼んで来い。下の宝は放っておいて、ここにある金を全部船に運ぶんだ」

「了解!」

 レイラは素早く階下へ下りていき、仲間たちに召集をかけた。

「みんな、そこの宝は置いといて上の階へ集まって。船長命令だよ」

「「「へい!」」」


 ――しばらくして、ウォルティンとキャプテン・ブライスのいる船室に全員が集まり、隠し財産の入った宝箱をすべて抱えていった。

「よぉーーし、者ども! これで引き揚げだ!」

「「「「あいあいさー!」」」」

 ひとりガックリとうなだれているウォルティンを尻目に、五人は意気揚々と〈ゴールデンバロン号〉へと引き揚げていった。

「…………なあレイラ、どうしてオレたちの獲物はこれだけになったんだ?」

 彼らの暮らすポートレプカへ戻る途中で、ドリーが船長の娘に訊ねた。

「ああ、父さんがあの船主と取り引きしたんだよ。この金を渡してあたしたちを撤収させるか、それともこの金を積んだまま船ごと海軍に摘発されるかどちらか選べ、ってね。まあ、どちらにしても〈ミエール商会〉は終わりだろうけどね」

「へぇ~……。オレたちが下にいる間にそんなことになってたのか」

 ドリーは潮風になびく、一つに束ねられたレイラの長い赤髪に見とれながらそう言った。

 彼が自分のことを気にかけてくれていることを、レイラは知っている。
 ドリーは一つ年上の十九歳だ。海賊やその家族たちが暮らすポートレプカの町で共に育ってきた幼なじみである。彼の父親も海賊だったが、彼がまだ幼い頃に海の事故で帰らぬ人となってしまったため、現在は母親と二人暮らしだ。
 それ以来、ブライス船長のことを父親のように慕い、レイラとも兄妹のように育ってきたつもりだったのだが……。彼女が年頃になって初めて、彼は自分の中の恋心に気づいたのだ。
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