七つの海を渡る愛 ~Love Ocean~
 レイラが海賊稼業の片棒を担いでいることを、ドリーはあまり快く思っていない。そのことはレイラ自身も気づいていた。

『どうして女のお前が、こんな危険なことをしなきゃいけないんだ』

 ハッキリとそう言われたことも何度もあった。『海賊なんかやめちまえ』とも。でも、レイラは何度彼からそう言われても、絶対に首を縦に振ることはなかった。
 レイラは海賊としての生き方が――というより、この船の仲間たちが大好きなのだ。そして、船長としての父の生き様も。

「――なあレイラ、お前はこのまま一生海賊として生きていくつもりなのか?」

 ……またこの話か。レイラはうんざりと髪をかき上げ、ドリーの方を振り向く。

「ドリー、何度も言ったと思うけど、あたしにはこの生き方しかできないんだよ。でも、うちの海賊団はまだ恵まれてる。法に背いてはいるかもしれないけど、幸い人助けもしてるおかげで無罪放免になってるから。このグレティンの国では」

「この国では、な。もし他の国で捕まったらどうなる? 海賊は例外なく絞首刑にされる国もあるんだぞ。最悪、海に放り込まれてサメどものエサにされる、そんな国だってある。それでもお前は、海賊としての暮らしを捨てられねえのか? (おか)に上がって、平和に暮らす道はねえのか」

「ドリー、それって」

「なあレイラ、オレと夫婦にならねえか。十八ならもう結婚できる歳だろ? オレが海賊稼業を続けるから、お前はポートレプカの町でオレの帰りを待ってればいい。……どうだ?」

「ちょっとドリー、あんたそれ……本気なの?」

 レイラは目をみはると同時に、近くに父がいないかと気にした。……幸いにも、父のキャプテン・ブライスは甲板にはおらず、船室に入っているようだった。

「オレは本気で言ってる。お前にだって、女としての幸せをつかむ権利はあるはずだ」

 彼が本気で自分を想ってくれていることは嬉しかったが、レイラは彼のことを〝男〟として見たことはなかった。

「……悪いね、ドリー。あたしにとってあんたはずっと兄みたいな存在なんだよ。だから結婚とかは考えられないし、だいいち父さんが許すはずないよ」

「船長が許すはずがない、って……お前が陸に上がることをか?」

「そうじゃなくて、あんたとあたしが夫婦になるってことを。父さんにとってはあんたも息子みたいなもんなんだから、自分の子供同士が夫婦になることなんて認めないって言ってるんだよ」

「……そうか、そうだよな。困らせて悪かった。今の話は忘れてくれ」

「うん……。ホントに悪いね、気持ちに応えられなくて」

「いや」

 〝海賊の娘〟として生まれてきた以上、女海賊になるのは当然のことだとレイラは思ってきた。けれどドリーの言ったとおり、別の生き方もあるのかもしれない。不思議とそう思えた。
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