七つの海を渡る愛 ~Love Ocean~
「――おーい、港が見えたぞー!」

 マストからユナンが叫ぶ。目の前はもうポートレプカの小さな港だ。

 この町は海賊たちだけが暮らす町というわけではない。魚や貝などを獲って暮らす漁師がいて、それを売る商人もいる。宿を営む家族も、酒場を営む者もいる。その中に、海賊たちも交じって暮らしている。
 この町の人々にとって、海賊たちはただの厄介者ではなく、町の治安を守る万人でもある。

 レイラの母――バイスの妻・ロージーは夫と娘が海へ出ている間、他の船員の妻や母親たちと協力して、海賊の妻として、また母親として彼らの誇りを守っている。
航海を終えて戻ってくる家族のために食事を作り、家の中をキレイに掃除して、洗濯もして。そして彼らが無事に帰ってくるのを待っているのだ。

「――わぁ、着いた! やっと帰ってきたって感じだねぇ」

 父であるキャプテン・ブライスと二人、先頭で桟橋に降り立ったレイラは、町の景色をグルリと見回して感慨に耽った。

「……あ、母さん! ただいま! 今日も無事に帰ってきたよ!」

 船員たちの前では勇ましい副船長の顔をしている彼女も、母親の前では一人の十八歳の少女の顔になる。

「おかえりなさい、レイラ。何事もなく帰ってきてくれてよかったわ。あなた、おかえりなさい」

 二人を桟橋で出迎えたロージーは四十を過ぎたばかり。町の酒場で働いていた頃に酔っ払いに絡まれ、そこを助けてくれたバイスと恋に落ちた。そして二人は結婚し、レイラを授かった。バイスが二十七歳、ロージーが二十三歳の頃のことだった。

「ロージー、ただいま帰った。いつも留守を守ってくれて本当にありがとう。お前がいてくれるから、俺もレイラも無事に帰れるんだ」

「そうだよ、母さん。あたしも父さんも、お母さんに淋しい思いをさせちゃいけないって思うからいつも無茶しないでいられるんだよ」

 もしも自分たちが命を落としてしまったら、残されたロージーはどうなるのか。――いつも二人の心の中にはそんな思いがある。それは、ドリーの父親が海で命を散らしてしまったからでもあった。あの出来事はこの親子だけでなく、他の船員たちの心の中にも深い傷として刻まれているのだ。

「――じゃあレイラ、お前は母さんと二人で先に帰っていてくれ。父さんはグリウスと会って、お前たちの分け前について相談してくるからな」

 グリウスという人物が王宮で貴族や商人たちの財産を管理していて、彼ら〈ゴールド・バロン海賊団〉による悪徳商会の隠し財産を没収する仕事の依頼人である。

「うん、分かった。――じゃあ母さん、帰ろう。夕食の用意、あたしも手伝うよ!」

 こうして父と桟橋で別れたレイラは、母のロージーと二人で楽しげに家路を急ぐのだった。
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