運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
 二日後、扉が静かに開き、みちるが現れた。手にはいつもと変わらぬパンとスープの盆が載っている。

「……今夜、窓を開けておきます」
 かすかな声だったが、その言葉だけで心臓の鼓動が一気に速くなる。

「十五分だけです。二十二時ちょうどから。それ以上は無理です」
「ありがとう……本当に……ありがとう……」
 かすれる声でそう答えた私に、みちるは何も言わず、そのまま背を向けて部屋を出ていった。

 その夜。私は脱出の準備を整えていた。最低限の現金と身分証、母の形見のペンダント、そして通帳と印鑑。給与は止められていなかったから、少しずつ別口座に移しておいた貯金がわずかにある。使わないで残しておいて、本当によかった。〝もしも〟に備えていた自分を、初めて心から褒めてやりたいと思った。
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