運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
 咄嗟に口をついて出たのは、佐々木の姓。本当に無意識だった。優希くんと知り合った当時、母が健在で私はまだ遠藤の姓を名乗っていた。偽ったわけでも、だますつもりでもなく、これが今の本名だ。

 私が「佐々木」と名乗った瞬間、一瞬だけ優希くんが驚いたような表情をした気がした――気のせいだろうか。
 それに反して、武藤先生は何の疑問も抱かなかったらしく、穏やかに言葉を続けた。

「突然のことでびっくりされたでしょう。でも、結菜ちゃんはお母さんが守ってくれたおかげで無傷でしたよ。むしろ元気すぎるくらいです」
 冗談めかしたその声に、張りつめていた緊張が少しだけ緩む。

「あの、本当にありがとうございました。では、お支払いをして私は……。保険証はあとでも大丈夫ですか? このお部屋代は必ず……」
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